プロフィール
2000年に草月流に入門し、竹中麗湖氏に師事。公共空間、店舗、イベント等でのディスプレイやおもてなしの花を提案。現代空間の中に人の心や呼吸に深く共鳴していくいけばなを表現。「第1回新いけばな主義」「第2回新いけばな主義」出品。いけばな教室 麗ーrei 主催。
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第3回
「Afterimage −残像」
廃材 カスミソウ
昨年から私達の日常を大きく変え、今もなお猛威を振るって脅かすウィルスにより、世界中の多くの人が、命を失い、人との交流や接触を奪われ、誰もがその喪失感と向き合う時間になったことと思います。
その12月にお世話になっていた花屋が、いけばな事業を辞めるという衝撃的なことが起こりました。花屋の入口には、たくさんの処分品が置かれるようになりました。屋上で染められていた着色素材、そこで使用されていた資材は、彩色が重ねられ、風化して捨てられていました。それを見た時、何故だかわからないのですが、美しいと感じました。床や壁に染みついた屋上空間の記憶と共に、その廃材を表現してみたいと思い、今回の作品のインスピレーションとなっています。表現の原動は、私の感情と結びついていて、その感情も時間とともに変化して消えていきます。でも心の底に何か割りきれないものとして、沈殿していき、記憶に留まり、まるで沼に絡まりつく植物のように、行き場を失う瞬間に出てくるのかもしれません。「残像」は、心の淵に溜まりゆくものでした。
撮影 青木一成
第2回
楓 藤蔓
「樹の呼吸」
いけばなの原点には、「樹」に対する神秘や生の温もりや呼吸感が根底にあり、そんな時に、随筆「崩れ」(幸田文著)で、著者が日本の崩壊山地を取材し、生あるものの哀しみと、そこにある大いなる自然のエネルギーに畏敬を示している内容に共感し、また、「木」(幸田文著)中では、倒木に、苔がついて土に還っていく様子を死の変相ではなく、「あわれもなにも持たない、生の姿だった。」と書かれた一文、私の表現も、死の変相ではなく、生への循環だと大きく納得したことによるものでした。
今回の第2回新いけばな主義では、カエデの木が製材され、それでも尚、宿る命、息づかい、そして、原木としての樹の記憶、木肌の白濁している様子に、その一本の樹の強さを感じ、藤づるで呼吸しているかのように表現しました。私達が森の中で見ている樹々の姿、静かなたたずまいの内には、想像を超えたエネルギーがうごめき、大地に根をはり息づくさま、そこにただ存在する呼吸、生あるものの象徴として表現しています。
撮影 青木一成