プロフィール
1986年よりいけばな活動を始める。『古流協会展』『日本いけばな芸術展』『いけばな公募展』などに出品。国内外にてデモンストレーション多数。2006年『大地の芸術祭』出品。2009年古流松應会10代家元就任。2017年『第11回いけばなインターナショナル世界大会(沖縄)』に於いてデモンストレーション。同年『第1回新いけばな主義』出品(以後毎回)。
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第3回
ツチニカエレズタダヨウイノチ
樹の瘤 流木 アマモ 柱時計
当初は流木三部作の最終章として、これまで蒐めてきた流木をうずたかく積み上げ供養塔を拵(こしら)えるつもりでいた。しかし春の説明会の折りに場所が天井の低い画廊のような場所に決まり、その考えは一瞬で白けたものになった。
ふりだしになったきり白紙のまま、設営の前日に海岸に打ち上げられた夥(おびただ)しい「アマモ」と出会った。その存在自体が作品として見事に成立していた。夢中でそれらをかき集め、車いっぱいに詰め込んだ。それまで墓標として頂に供えるつもりであった柱時計を樹の瘤の空(うろ)に収め、作品の肝とした。
作品の背景にはある故人への想いもあるが、それを語るは野暮だし観る方には関係なかろう。時計の針は敢えて拾ったままにした。今回はそれが良いと自分は思った。
何年もかけて構築していく作品もあれば、その瞬間のみに生まれる作品もあるだろう。アプローチはさまざまだ。今回も果たして後者であった。
撮影 長谷川修
第2回
したたり
流木 昆布 吹きガラス一輪挿し
本来植物は芽生えたらあと、その地にて宿命をつい果てるが常だが、中には思いもかけぬ自然災害などにより川に流され海にまで至り荒浪に揉まれ、長い旅をした末に再び新たなる地にたどり着いたものたちがいる。もはや前世が何であったか何処に居たのかさえ私には知る由もない。そんな数奇な運命を辿ってきた漂流者たちにその存在以上に気の利いた企てなど出来るはずもない。
その潮騒の記憶より抽出されたひとしずくのみをただ有難くいただいた。
撮影 小久江康光